About にも書いているが、私は FX の成功者ではなく、プロップルールの攻略者である。
具体的なエントリー手法の話に入る前に、まずは考え方として共有したい。プロップファーム試験は、感覚や「勝てるチャート」だけでは決まらない。少なくとも次の変数で、トータルの期待値が決まる。
- 試験料(W)
- 合格率(X)
- 合格口座での出金到達率(p)
- 1 回あたりの平均出金額(Z)
この記事では、その骨格を言葉にし、イメージ用の簡易モデルも置く。数値は現実の保証ではなく、頭の中の物差しだ。
まず期待値で見る
リアル FX の口座成績を自慢する話ではない。チャレンジを何度も買い、合格し、出金し、失格し、また買う——そのループを、商売として成立させるかどうかを見る。
ここで重要なのが、Funded 口座は 1 度出金して終わりではないことだ。失格するまで継続し、複数回出金(リピート出金)できる。1 回合格すれば終わり、ではない。
イメージのために、Gemini で簡易計算したモデルを置く(仮定は固定。現場の実測ではない)。
- 試験料 W = $300
- 合格後、毎回の「出金到達」確率 p = 50%(固定)
- 1 回あたり平均出金額 Z = $2,000
継続出金の数学(等比数列の和)
合格後の出金到達率が毎回 50% なら、合格 1 回あたりの「出金回数の期待値」N は無限級数になる。
- 1 回目に出金できる確率: 50%
- 2 回目: 50% × 50% = 25%
- 3 回目: 12.5%
- …
N = 0.5 + 0.5² + 0.5³ + … = 0.5 / (1 − 0.5) = 1 回
つまりこの仮定では、合格 1 回あたり平均して「合計 1 回分($2,000)」の出金が得られる、という計算になる。
合格率 X のボーダーライン
継続出金を入れた、試験 1 回あたりの期待値 E は次の形だ。
E = (X × N × Z) − W
N = 1、Z = $2,000、W = $300 を入れると:
E = (X × 1 × $2,000) − $300 = $2,000X − $300
利益が出る条件(E > 0)は:
$2,000X > $300 → X > 0.15(15%)
結論だけ言うと、出金到達が毎回 50% で続く仮定なら、合格率 X が 15%(だいたい 7 回に 1 回)を超えれば、トータルで黒字側に倒れる、という物差しになる。
合格率別のイメージ表(継続出金考慮)
試験 1 回あたりの期待純利益の一覧(同じ仮定)。
| 合格率 (X) | 期待出金回数 (X×N) | 期待売上 | 試験料 (W) | 純利益期待値 (E) |
|---|---|---|---|---|
| 10% | 0.10 回 | $200 | $300 | −$100(赤字) |
| 15% | 0.15 回 | $300 | $300 | $0(損益分岐) |
| 20% | 0.20 回 | $400 | $300 | +$100 |
| 30% | 0.30 回 | $600 | $300 | +$300(回収率 200%) |
| 50% | 0.50 回 | $1,000 | $300 | +$700(回収率 333%) |
繰り返しになるが、これはイメージ用の単純モデルだ。実際のファームでは BAN・出金遅延・ルール変更・手数料で p も Z も揺れる。それでも「何%合格できれば、この試験料に見合うか」を言語化しておくと、値引きに釣られて無計画に買う、という失敗は減る。
失敗を許容できる——リアル FX との決定的な差
リアル FX 口座と違い、プロップの失敗は「破綻」に直結しない。その試験が終わるだけだ。だから、失敗を許容した戦略を取りやすい。
少し現実味がないかもしれない例だが、次のようなトレードを繰り返すとする。
- 勝率 85%
- 勝てば口座の +1%
- 負ければ −5%
統計上はエッジがある戦略でも、リアル口座では多くの人が採用しない。運悪く連敗すれば大損害になりうるし、連敗後の長い立て直し期のメンタル維持は至難の業だからだ。
プロップなら、運が悪くてもその試験が失敗するだけ。またやり直せる。レバレッジ効果(正確には、試験料に対するシミュ資金の大きさ)も効くので、成功したときの出金額は、小さい元手からでも大きく狙える。
こういう背景から、私は「FX で勝つ人」ではなく「プロップを攻略する人」の側を選んだ。About に書いた通り、リアルとプロップではアプローチと戦略が完全に別物だと思っている。
ルールという障害物は、仕組みで避ける
プロップファームは、試験を難しくする要素をいくつも置いている。ニュース時のトレード不可、土日の制限、などだ。
ただ、それは「読めない相場」ではなく、触らなければ抵触しないルールであることが多い。プログラムや運用フローで抵触しないようにすれば、回避できる。勝負どころは、一定のリスクリワードを狙ったトレードを淡々と続けることだ。
そして、1 本の試験に人生を賭けない。多数の試験を並行し、確率の収束を目指す。単発の合格/不合格のノイズに振り回されないための、プロップ側の解だ。
これぞプロップトレーダーのアプローチ
まとめると、次の一点に尽きる。
私はチャートの神になろうとしているのではない。試験料と合格率と出金の期待値を設計し、失敗コストを試験単位に閉じ込め、ルール抵触を仕組みで避け、本数で収束させる——そのゲームの攻略者でいようとしている。
細部のツールやストラテジーの数字は、別のブログ記事で書く予定だ。ここでは「なぜその運用になるのか」の思想だけを置いた。数値は変わり、業者は壊れ、BAN も起きる。それでも、物差しを持たないままチャレンジを買うよりは、まだマシだと思っている。