固定住宅 IP を取るために、クラウドの VPS と自室のミニ PC を並べて回していました。VPS 側で MT5 を動かして、通信だけ Proxifier で自室のモバイル回線へ抜く。固定 IP のモバイル Proxy で書いた構成です。出口の設計自体は、いまでも正しいと思っています。
無駄だったのは箱が二つあったこと。VPS のコンソールと自室の画面を行き来するのが、地味にイライラしてたんですよね。
そこで、計算も MT5 も自室のミニ PC に載せ、出口だけ従来どおりモバイル Wi-Fi に残す形へ畳みました。名義(KYC)は 4 つあるので、ミニ PC も 4 台です。1 名義 1 箱。同じ物理箱に KYC を混ぜない。VPS を否定する話ではありません。VPS が要る理由 は別に書いてある。今回削ったのは、同じ常時起動を二箇所で買っていたコストです。
数字から先に
| 以前(1 名義) | 今後(1 名義) | |
|---|---|---|
| 計算・MT5 | VPS 4 台(月 2.8 万円) | ミニ PC 1 台(Hyper-V Guest 4) |
| 出口 IP | 固定 IP モバイル Wi-Fi(月 8,000 円) | 同じ(月 8,000 円) |
| 毎月 | 約 3.6 万円 | 約 8,000 円 |
| 本体 | — | 約 9 万円(5 ヶ月で回収) |
毎月おおよそ 2 万円 減ります。本体代は「高い買い物」ではなく、5 ヶ月分の VPS 代です。電気代は自宅側に寄るので、純粋な 2 万円引きでは終わらない。4 名義なら箱も 4 台で、初期費用は約 36 万円。1 名義あたりの回収ペースは同じです。
なぜ 4 台か ——KYC ごとに箱を分ける
口座を増やすほど、名義と IP と端末の塊は揃えておきたい。CID / デバイスの話 と同じで、物理を共有した瞬間に「同じ場所の別人」に見えやすい。だから KYC が 4 つなら、ミニ PC も 4 台です。
| 1 名義 | 4 名義(いま) | |
|---|---|---|
| ミニ PC | 1 台 | 4 台 |
| Hyper-V Guest | 4 | 16 |
| MT5 | 約 40 台 | 約 40 台 × 4 箱 |
| 出口 | モバイル固定 IP 1 本 | 名義ごとに分ける |
1 台が落ちても、他の名義は生きます。同じ箱に 2 KYC を積むほうが、管理は楽に見えて危ない。ここは分けたままがいいと思っています。
なぜこの構成にしたか
前回の記事で書いた通り、多数チャレンジを回すなら IP も設計対象 です。データセンター直結の出口だけだと、居住地寄りの経路より疑われやすい。だからモバイル固定 IP は残す。消したのは、その出口に届けるためのクラウド箱です。
自室のミニ PC は、もともと Proxy 用に 24 時間付いていました。電源も熱対策も、もう払っている。その横で VPS 4 台分の Windows を借り続けるのが、だんだん下手な買い方に見えてきた。
| 残したもの | やめたもの |
|---|---|
| 固定 IP のモバイル回線 | クラウド VPS(名義あたり 4 台) |
| Guest 単位の隔離(昔の VPS 1 台相当) | VPS → 自宅、という遠回りのホップ |
| KYC ごとの物理箱 | 箱の二重管理 |
Guest を 4 つにしたのは、以前の VPS 台数に合わせたからです。1 つの Windows に MT5 を全部積むと、更新・クラッシュ・接続の見え方が一塊になる。物理は KYC 単位、Guest は負荷単位、という切り方です。
箱の条件 ——なぜこのミニ PC か
欲しかったのは「安い小型 PC」ではなく、常時稼働の Host です。条件は先に固めて、あとから機種を当てました。
| 条件 | 理由 |
|---|---|
| メモリ 32GB | Guest 4 つ + Host。16GB だとすぐ詰む |
| 8 コア 16 スレッド | Guest に vCPU を割いても、Host 側が死なない |
| Ethernet と Wi-Fi を同時に | 管理は有線、出口だけモバイルへ |
| 冷却が本気 | 夏場にファン 1 基だと、熱で先に死ぬ |
| Windows 11 Pro | Home では Hyper-V も incoming RDP も厳しい |
当たったのが GMKtec の NucBox M7(Ryzen 7 PRO 6850H / 32GB + 512GB)(新しいタブで開く)(広告) です。CPU は 8 コア 16 スレッド、DDR5 の 32GB、有線が 2.5G で 2 本、Wi-Fi 6 が乗っている。デュアルファンなのが、常時稼働ではいちばんありがたい。SSD 512GB は Guest を 4 つ置くと余裕はないので、必要ならあとから足せます。これを KYC の数だけ買った、というだけです。
「ミニ PC なら何でもいい」ではないです。NIC が 1 系統しかないと、Host のデフォルトルートとブローカー出口を分けにくい。ファンが弱いと、夏に先に落ちるのは MT5 より箱です。
歩き方 ——Host / Guest / 出口
1 台の中の図は、これだけです。4 台とも同じ型です。
| 層 | 役割 |
|---|---|
| Host(物理ミニ PC) | Windows 11 Pro。Ethernet がデフォルトルート。Hyper-V と管理用 RDP |
| gost | Host 上の小さな SOCKS プロセス。出口 NIC だけモバイル Wi-Fi に固定 |
| Guest × 4 | 昔の VPS 1 台相当。ここに MT5 を置く |
| Proxifier(Guest 内) | MT5 など指定プロセスだけ Host の SOCKS へ流す |
| 固定 IP モバイル Wi-Fi | ブローカーから見える出口。回線の話は前回の記事 |
手順も、長くない。
- Host を Ethernet に繋ぐ。 管理・Windows Update・RDP はこっち。家の ISP が見える。
- 同じ Host の Wi-Fi をモバイルルーターへ。 デフォルトルートは Ethernet のままにする。Wi-Fi 側のメトリックを上げて、Host OS がモバイルに吸い込まれないようにする。
- Hyper-V で Guest を切る。 1 台あたり 4。Guest ごとに Windows ライセンスが要る。Host の Pro は Guest をカバーしない。
- Host で gost を立て、出口を Wi-Fi の IPv4 に縛る。 ブローカー向け SOCKS はここだけ。Host 本体の通信は Ethernet に残す。
- 各 Guest で Proxifier を Host の SOCKS に向ける。 MT5 だけ流す。ブラウザや RDP まで全部プロキシに通す必要はない。
- 出口を確認する。 Host 直の
api.ipify.orgは自宅 ISP。SOCKS 経由・Guest の MT5 側はモバイル固定 IP。DNS も家の ISP が見えたら失敗です。
gost は VM ではないです。Host の薄いプロセスなので、Guest のメモリを食わない。以前は「Proxy 専用のミニ PC」と「計算用 VPS」が分かれていたのを、同じ箱の中で役割だけ分けた、という感じです。
モバイル Wi-Fi 側の熱対策は、前回の FS040W と冷却パッド のままです。箱を畳んでも、ルーターの熱は残ります。KYC ごとに出口を分けるなら、回線も名義単位です。
運用の感触
1 箱の MT5 はだいたい 40 台。Guest 4 つに振り分けているので、1 Guest あたり 10 前後です。更新や再起動を Guest 単位でできるのが、VPS 4 台のときと同じ感覚で助かる。
物理は KYC ごとに 1 台なので、電源・ファンの心配は名義単位に閉じます。その代わり、「どの VPS の課金が今月切れるか」みたいな棚卸しが消えた。管理コストが落ちた、と X に書いたのはこの部分です。画面が名義ごとの箱に揃った瞬間、肩の力が抜けました。
向いているのは、すでにモバイル固定 IP を名義ごとに持っていて、MT5 の台数が VPS 代に見合わなくなってきた人です。口座が 1〜2 本、名義も 1 つなら、普通に VPS を 1 台借りる ほうが早い。Hyper-V も Windows ライセンスも、趣味の仮想化をやりたい人向けの道具ではない。プロップの箱を、家計の固定費から外したい人向けです。
向かない条件もはっきりしています。
- 自宅の停電・工事で回線が止まるのが許容できない
- Guest 用の Windows ライセンスを用意したくない
- モバイル固定 IP をまだ持っていない(先に前回の記事)
- Host の有線と Wi-Fi を同時に扱いたくない
- 複数 KYC を 1 台に載せたい(分けたほうがいい)
停電の弱さは、クラウド VPS の強みそのものです。そこを取るなら、出口だけ自室、計算はクラウド、の旧構成のままがいい。自分は「二重の画面」のほうが先に限界でした。
まとめ
- 固定住宅 IP は残す。やめたのは、そのためのクラウド VPS
- KYC が 4 つならミニ PC も 4 台。1 名義 1 箱
- 1 台の中は Hyper-V Guest 4 つ。昔の VPS 4 台相当
- Host は Ethernet、ブローカー出口だけ gost 経由でモバイル Wi-Fi
- 1 名義あたり月約 2 万円減。本体約 9 万円は 5 ヶ月で戻る計算
- 熱・停電・ライセンスは、畳んだあとに残る宿題
派手な「自宅サーバー構築」ではないです。払っていた箱を、役割ごとに分け直しただけ。出口の話は前回、箱の話が今回、という切り分けです。